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防水工事を修繕費で節税対策をしよう|アパート・マンション・ビルオーナーの経費削減策をご紹介

防水工事

防水工事は、建物の維持・管理のために必要な工事です。マンションなどのオーナーは、この費用を修繕費として経費にできるのか、それとも資本的支出になるのかわからない方もいらっしゃると思います。

この記事を読んでいただければ、修繕費・資本的支出の特徴がわかり、節税できるかどうか考えやすくなります。

防水工事を修繕費として計上できるケース

修繕費になる条件

防水工事の費用が修繕費になるかどうかには、次のような条件があります。

  • 費用が20万円未満
  • 工事周期が3年以内
  • 費用が60万円未満
  • 取得価額が前回の決算時の10%以下

この条件は国税庁が定めている形式基準です。この中の基準に1つでも当てはまれば修繕費となります。

しかし、これはあくまでも基準です。修繕費になるかどうかは工事案件によって異なります。

建物を維持するための工事

実際に過去に裁決があった事例を元に、修繕費になったケースを解説します。

■平成元年10月6日裁決
工事概要:屋上からの漏水が見つかり、それを防止するための工事
建物:鉄筋コンクリート
建築年数:20年
保証期間:10年
モルタルで水こう配を新たに設置
工法は一般的な工法を採用

工事対象の建物は、このときが初めての防水工事でした。賃貸料の値上げなども行っていません。

この結果、防水工事費は修繕費となりました。

理由としては、この防水工事が、元々建物に備わっていた機能性を維持させるための工事だったからです。また、次の点も重要な要因でした。

  • 本来の建物の使用可能期間を延長させる
  • 建物の資産額を増加させるものではない
  • 建物取得価額の増加には当たらない

上記の点が認められたため、修繕費となりました。

この事例から、部分的な漏水の場合、漏水箇所を特定できないため、全体の修繕をする場合は修繕費として認められる可能性があります。

また、修繕方法として適切であれば、工事方法も関係なく修繕費になる可能性が示されました。

修繕方法・材料の違い

さらにもう1件、具体例を紹介します。

■平成11年10月15日裁決
工事概要:屋上の美装工事及および、補修工事
建築年数:12年
屋上の床面にウレタン塗装を実施
美装工事で建物の耐久性が改善した可能性有り

屋上の工事で床面をはがさず、そのままの床面にウレタン塗装を行いました。

普通の塗装材に比べ、材質的に防水性が高い上質のものを使用しています。

理由としては、壁に壁面剥離が進行しているので、それを防止するためです。普通の塗装材では剥離の進行は止められません。

この工事の結果は、次の理由から修繕費として認められました。

  • 行われた美装工事は、一般的な美装工事である
  • 12年経過した建物の、一般的な塗り替え美装工事だといえる
  • 上質な材料を「特別に」用いたわけではない

上記の理由から、前述の内容と同じように、次のことに当てはまります。

  • 本来の建物の使用可能期間を延長させる
  • 建物の資産額を増加させるものではない
  • 建物取得価額の増加には当たらない

こうして、修繕費であるという裁決になりました。

この事例から、建物の問題点を解決し、適切な維持管理の方法であれば、高価な材料を使用しても修繕費になる可能性があります。

修繕費のメリット・デメリット

修繕費のメリット

修繕費のメリットは、節税対策になることです。修繕費は経費として一括して計上できます。

税金は、利益に対して税率をかけた金額が納税額です。

売上ー経費=利益

上記の利益に税率がかけられます。経費の金額が上がると、それだけ利益額は計算上、少なくなります。そのため納税額を少なくできるのです。

修繕費のデメリット

修繕費のデメリットは融資を受けにくくなることです。一括した経費を差し引いた後に残った利益が少ないと、銀行からは経営がうまくいっていない、と判断される可能性があります。そうなると、銀行からお金を借りにくくなるのです。

防水工事を修繕費で計上されないケース(資本的支出の場合)

資本的支出とは

アパートなどの建物(固定資産)の修理や改良による費用を支払ったときに、その支払いによって建物の価値や耐久性が上昇した場合、それは資本的支出になります。

修繕費の場合は、修繕する目的が「建物の原状回復や建物を維持・管理すること」でした。修繕する目的が「建物の性能や価値、耐久性を上げること。修繕の結果、資産の増加につながること」である場合は、資本的支出になります。

資本的支出は「減価償却」することになります。

減価償却とは、不動産などの固定資産の購入費用を、使用可能期間にわたって、分割して費用を計上する会計処理です。そのため、経費として一括で計上することはできません。

具体的には次のようなことが、資本的支出と見なされる可能性があります。

  • 原状回復以上の大規模な工事
  • 外観をより良く見せる防水美装
  • 耐久力の高い部材を使用した工事 

原状回復以上の大規模な工事

原状回復以上の大規模な工事について解説します。

たとえば、マンションの大規模改修工事の際に、仕上げ方法をウレタン塗膜防水から、防水効果の高いFRP防水塗膜に変更した場合です。

●ウレタン塗膜防水

FRP防水に比べコストが安い防水仕上げの方法です。建物の亀裂やヒビ割れ部分にも塗膜を施工することが可能なため、複雑な部位にも施工できます。

しかし、乾燥期間が必要なため、工期は長くなります。

また、職人が手動で手塗りをするため、塗りムラをできるだけ抑えた綺麗な塗膜を施工

できるかどうかは、職人の技術によって変わります。

●FRP防水塗膜

FRPとは「ガラス繊維強化プラスチック」のことです。合成樹脂と一緒にして強化された合成樹脂を使用します。

耐水性、耐久性、耐熱性に優れています。さらに速乾性があるため工期は短いです。

しかし、この工法での施工はコストが高いです。また、臭気があるため、近隣からクレームが発生する可能性もあります。

ウレタン塗膜防水から、FRP防水塗膜へ変更になったときは、元々備えていなかった機能性が付加されたことになります。

そこに特別な理由などもなく、原状回復以上の工事となれば、その費用は資本的支出として計上される可能性が高いです。

耐久力の高い部材を使用した工事

耐久力の高い部材を使用した工事について解説します。

たとえば、防水部材として塗膜を使用していたが、防水工事でアスファルト防水に変更する、という場合です。

立地や外的要因によって変化するのが前提ですが、塗膜防水の標準耐久年数は10年です。

これに対し、アスファルト防水露出工法は13年、アスファルト防水保護工法は17年の耐久年数となっております。

●アスファルト防水露出工法

アスファルトによる防水面が、露出している状態の防水工法です。

●アスファルト防水保護工法

アスファルトによる防水面の上から、モルタルなどを施工して、防水面を保護する防水工法です。

上記の例のように、耐久力の高い部材に変更する工事で、特別な事情もなければその費用は資本的支出として計上される可能性が高いです。

資本的支出のメリット・デメリット

資本的支出のメリット

資本的支出のメリットは、さまざまな経営の対応ができる点です。

下記のような場合は、減価償却をして調整できる資本的支出のほうが、経営戦略を立てやすい可能性があります。

  • 利益が少なく、融資の申請を検討している場合
  • 収入が安定しない場合

このような場合は、税理士との相談も視野に入れながら、経営を検討していくことをおすすめします。

資本的支出のデメリット

資本的支出のデメリットは、経費にできないため節税対策にならないことです。

しかし、経費が多額になることで収支が赤字になってはいけません。

計画的に経費精算を行う必要があります。

まとめ

防水工事の費用について、修繕費となるのか、資本的支出となるのかについて解説しました。

修繕費になれば、その節税効果は大きいです。ただし、判断が難しい工事案件もあります。そのような場合、費用が必要ですが、税理士に相談することも検討しましょう。会社の経営状態によって、適切な判断で節税することをおすすめします。

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