塩ビシート防水の寿命を伸ばすメンテナンスとは?劣化によるリスクや最適な改修方法も徹底解説
塩ビシート防水などの防水対策は、建物と建物の中で生活をしている人の安全に重要な対策です。そのため、防水対策を長く機能させることが重要です。
本記事では、防水対策の寿命を延ばすためのメンテナンスや、劣化したときの改修方法を解説します。建物を所有しているオーナー様などはぜひ参考にしてください。
塩ビシート防水とは?
塩ビシート防水について解説します。
塩ビシートとは、塩化ビニル樹脂に可塑剤を入れたものをシート状にしたもので、機能性に優れ、下記の特徴があります。
- 耐摩耗性
- 耐候性
- 耐圧縮性
- 耐熱性
上記を有しているため耐久性が高く、標準耐用年数は10年〜20年と、10年以上の長期間使用可能です。
塩ビシート防水工法は、屋上やバルコニー床、共用部の廊下などで施工が可能です。シートを広げていく施工方法なので、一度に広範囲の施工が可能です。
そのため、マンションやビルの屋上で使用されます。
また、着色性、自己消火性があるため、デザイン面や安全性にも配慮された素材です。
塩ビシート防水工法には、「密着工法」と「機械固定工法」の2種類の工法があります。順番に解説していきます。
密着工法
雨漏り対策に有効な防水工法で、塩ビシートを接着剤などで貼り付ける工法です。下地が平らでなければ施工が難しいため、現場によっては、塩ビシート防水や密着工法での施工ができない場合もあります。
下地の撤去の必要がなく、リフォームなどの改修工事におすすめです。軽量なため建物への荷重負担も少ないというメリットもあります。
また、軽歩行程度であれば問題のない強度もあります。さらに、乾燥させる時間を取る必要がないため、工期も短くて済む工法です。
機械固定工法
こちらも雨漏りに大変有効な工法です。塩ビシートを鋼板やビスによって固定する防水工法になります。
シートを上から被せて施工するため、既存の防水層の撤去は不要です。さらに下地の調整も不要なため、時間や手間を大幅にカットできます。また、下地の調整がいらないため、リフォーム工事にもおすすめの工法です。
注意点としては、人の歩行は不向きとされている工法のため、人が歩行することのない屋上などに採用されます。
塩ビシート防水の寿命
防水層は、どの防水工法を使用しても紫外線や、太陽熱、雨風、物の接触などにより劣化していきます。
塩ビシート防水工法の耐用年数は10〜20年です。ほかの防水工法と比較しても一番寿命の長い防水工法です。
防水工法/耐用年数
塩ビシート防水工法/10〜20年
ウレタン防水工法/10〜15年
FRP防水工法/10〜15年
寿命が過ぎることで起こるリスクとは?
ここからは、寿命を過ぎることで発生する可能性が高いリスクについて解説します。
塩ビシート防水の寿命が過ぎると、次のリスクがあります。
- 漏水・雨漏り
- 建物の寿命に影響
- 建物の資産価値の低下
漏水・雨漏り
塩ビシート防水の寿命が過ぎると、漏水や雨漏りが起こる可能性が非常に高まります。雨漏りから建物を守るためのシートなので、シートの破れ・めくれなどが生じ、機能しなくなると雨水が入ってきます。
建物の寿命に影響
雨水が浸水すると、雨漏りとして水滴が落ちてくるだけでなく、建物の内部や天井裏を腐食させたり、濡れた箇所からカビを発生させたりします。そうなると、建物自体の寿命が短くなります。その建物で作業や生活している人の安全にもかかわる事態です。
建物の資産価値の低下
建物の寿命自体が短くなると、建物の資産価格は下落します。寿命が短くなり、下記の状態のままで放置していては、築年数とともに資産価格は下がっていきます。
- 防水対策が機能していない
- 内部に腐食している箇所がある
- 何箇所もカビが生えている
早急に防水工事を含めたリフォーム工事が必要です。
寿命を伸ばすメンテナンスとは?
塩ビシート防水の寿命を伸ばし、長持ちさせるためのメンテナンスについて解説します。
次のことを行うことで寿命を伸ばすことが可能です。
- ドレン管の清掃
- トップコートのメンテナンス
- 劣化状況の確認・補修
ドレン管の清掃
ドレン管とは、雨水などを流すための排水管のことです。ドレン管の清掃は、定期的に行いましょう。
ドレン管に土やゴミなどが詰まると雨水が流れなくなり、水が溜まった状態になります。ドレン管以外の場所に流れる可能性もあり、漏水の原因となってしまいます。
トップコートのメンテナンス
トップコートのメンテナンスを行いましょう。トップコートとは、防水層を保護するために、仕上げ材として上から施工するシートや塗料のことです。
防水層は、トップコートで保護しなければ、風雨にさらされたり、紫外線や太陽からの熱射などの影響を受けたりして劣化していきます。
トップコートがあることで防水層が維持できますが、トップコートも経年劣化が発生します。そのため、5年程の間隔でトップコートの再塗装などのメンテナンスを行い、防水層がダメージを受けないようにすることが重要です。
劣化状況の確認・補修
塩ビシート防水には、さまざまな劣化を示す症状があります。
具体的には下記のような症状です。現状を確認し、補修作業を行って寿命を延ばせるように工夫しましょう。
- シートの膨れ
- シートの破れ
- シート結合部や端部の剥がれ
- シートの浮き、めくれ
シートの膨れ
シートの膨れは、防水層の下に浸水した水が水蒸気になり、膨れを発生させます。
膨れがあってもすぐに雨漏りなどの被害が発生するわけではありません。
しかし、塩ビシートの膨れている部分は、何かがぶつかりやすい状態になっています。シートが破れてしまうと、そこから雨水が浸水していきます。膨れが発生しているのを見つけたら、メンテナンスの時期がきたと考えましょう。
シートの破れ
破れている防水シートも建物の屋上では散見されます。塩ビシートの厚さは1.5~2.5mm程度です。鋭利な物や、重さがあるものが落下すると破れてしまいます。鳥などが塩ビシートを破ってしまう事例も発生しています。
また、台風や強風時に飛ばされてきた物がシートに当たり、破いてしまう場合もあります。
カラスなどの鳥害についてはいつ発生するのか予測ができないため、定期的な確認が必要です。台風や強風の後も必ず塩ビシートの状態を確認しましょう。
シート接合部や端部の剥がれ
塩ビシート防水はシートを貼り合わせる工法なので、施工されているさまざまな場所に塩ビシートの結合部や端部があります。
強風や、物の接触などにより、端部は剥がれが生じる可能性が高いです。そこから雨水が浸水し、下地やシートの接着面を傷めて劣化させてしまいます。
このことが要因で、シートの剥がれや浮きという状態を悪化させることもあります。少しシートの端部が剥がれているだけであっても、防水機能や耐用年数の悪化などに直結する問題です。シートの剥がれなどの異常を発見したら、早めに専門業者に相談しましょう。
シートの浮き、めくれ
防水シートが剥がれている箇所から雨水が入ると、シートの密着性が失われていきます。密着性がなくなると、剥がれている部分が拡大し、台風や強風の際にあおられてシート全体がめくれてしまう可能性が高いです。
防水シートがめくれている状態では、下地に雨水が直接当たりダメージを負います。下地が水分を吸い込むと、雨漏りのリスクが急激に高まります。防水機能が働いていない状態なので、いつ雨漏りが始まってもおかしくない状態です。
劣化した場合の改修方法
塩ビシートが劣化し、上述した状態になったときの補修方法について解説します。
シートの膨れ
塩ビシートが膨れたときの対応策としては、小さく部分的な膨れであれば、脱気筒から水蒸気を逃す方法が有効です。
シートの破れ
破れている箇所にパッチ処理を行い、覆うことで部分補修を行って被害箇所からの雨水の浸水を防ぎます。
シート結合部や端部の剥がれ
部分的に塩ビシートが剥がれている場合、剥がれている箇所に接着、熱溶着による施工を行います。
シートの浮き、めくれ
塩ビシートが剥がれている状態が要因なので、対策は剥がれている状態と同様です。剥がれている箇所に接着、熱溶着による施工を行って対処します。
まとめ
塩ビシート防水の寿命を延ばす対策について解説しました。次の対策を行いましょう。
- ドレン管の清掃
- トップコートのメンテナンス
- 劣化状況の確認・補修
塩ビシートの寿命を延ばすことは、建物の寿命を延ばすことや、建物で暮らしている人の安全にもつながります。大きな問題が発生する前に防水対策を行いましょう。