塩ビシート防水に必要なトップコートとは?必要な理由や種類、長持ちさせる方法まで徹底解説
雨漏りなどの漏水被害を防ぐために防水対策が必要です。さまざまな防水対策方法がありますが、防水工事をしても永久にその状態を保てるわけではありません。
本記事では防水工法の一つである塩ビシート防水に必要なトップコートについて、特徴などを解説します。防水工事になぜトップコートが必要なのかがわかります。
マイホームをお持ちの方や、ビル・マンションのオーナー様はぜひ参考にしてください。
塩ビシート防水とは?
まず、塩ビシート防水について塩ビシートとシート防水に分けて解説します。
塩ビシート
塩化ビニル樹脂に可塑剤を混ぜたものをシート状にしたものです。
耐候性・耐熱性・耐摩耗性などの機能を持ち、そのほかにも多くの機能性がありメリットの多い素材です。
また、着色性もありデザイン性のある防水層を作ることが可能です。さらに、塩ビシートは自己消火性があるため、延焼しにくいという特徴があります。標準耐用年数は10年〜15年と、10年以上にわたって使用可能です。
シート防水
シート防水とは、塩化ビニールやゴム製のシートを施工する防水工事のことです。
この防水工事には次の2種類の工法があります。
- 密着工法
- 機械固定工法
上記2種類の工法に金額の大きな違いはなく、面積の広い一軒家の屋上や、ビル・マンションの屋上で施工されることが多いです。
トップコートとは?
トップコートとは、漏水対策のために作られた防水層を保護するために、仕上げとして上から施工する塗料やシートのことです。
防水層は、トップコートで保護しなければ次のような影響を受け、劣化していきます。
- 紫外線
- 太陽光からの熱射
- 雨・風での経年劣化
トップコートはどのような種類でも施工すればいい、というものではありません。防水工事の種類に合わせて、施工する必要があります。
防水工事を行う際に、次のことは関連しあっています。
- 建物の状態
- 防水工事の種類
- トップコートの種類
建物の状態や種類によって、防水工事の種類が決まります。そして防水工事の種類が決まればトップコートの種類が決まります。
工事の際は一つ一つ専門業者に相談しながら進めていきましょう。
塩ビシート防水にトップコートが必要な理由
塩ビシート防水はトップコートを施工しなくても、10年以上の耐久性があります。しかし、紫外線による劣化は毎日進行し、特に夏の間は強い太陽熱を受けています。
トップコートを施工することにより、自然環境などの外的要因から防水層を保護することで劣化の進行を遅らせることが可能です。
トップコートを施工しなければ、防水層の劣化が早まるため異常が生じやすくなり、想定していた耐用年数を維持できず、補修やリフォームまでのスパンが短くなってしまいます。
また、別のメリットとして、塩ビシートの防汚性能が向上するという機能があります。
塩ビシートは表面に汚れが付きやすいのですが、トップコートを施工すると汚れが付きにくくなります。汚れが付着しやすいのが塩ビシートの弱点です。
一方、デメリットは、塩ビシートを重ね張りしての補修が難しくなります。
塩ビシートは、塩ビ同士を溶かして付着させることで補修が可能です。しかし、塗料を施工することで塩ビ同士を付けられなくなります。
シートのジョイント部でなければ、不具合が生じた箇所の下にシートを差し込めば補修がききます。しかし、重ね合わせ部の付近に不具合が生じた場合、補修工事が難しくなる可能性があります。
繰り返しになりますが、塩ビシート防水が他の防水と異なるところは、トップコートがなくても十分な耐久性能をもっている点です。もちろん、トップコートが施工されている状態が一番理想です。しかし、理屈上は塩ビシートの施工後はメンテナンスがなくても一定期間は問題がない状態となります。
建物を長期的に安全に保てるように、メリット・デメリットのバランスを考えていくことが重要です。
トップコートの種類
塩ビシートのトップコートは、合成ゴムに影響を与えない水性タイプのトップコートを使用します。
次の塩ビシート専用塗料(水性)を紹介します。
- HP塩ビ用シリコントップP
- クールトップセラ塩ビ用Si
HP塩ビ用シリコントップP
「HP塩ビ用シリコントップP」このトップコートの種類は「塩ビ防水シート用・水性1液反応硬化形アクリルシリコン樹脂系塗料」です。長い種類名ですが、類似物を検索する際に役に立ちますので知っておきましょう。
<特徴>
アクリルシリコン樹脂系の水性塗料で、耐候性に優れています。
一般的な塗料を塗ってしまうと、塩ビに含まれている可塑剤の影響で異常が発生し、長期にわたりベタ付きが残り、汚れが付着してしまいます。
このトップコートは、塩ビシート防水専用の設計になっている反応硬化技術により、可塑剤の影響を抑えることができます。
つまり、専用のトップコートを使用すれば可塑剤の影響を受けることなく、直接塗装が可能です。
また、防水材の伸縮にも対応し、耐水性にも優れている素材です。
<使用方法>
塗装器具は、水性刷毛やウールローラーを使用し、2回塗装します。1回目と2回目の間隔は、気温23度で3時間以上空けてください。そのうえで、1回目の塗装がよく乾いているのを確認してから2回目の塗装を行ってください。
<使用量>
塗布する使用量は2回の塗装で、1㎡で0.3〜0.5kgを使用します。
クールトップセラ塩ビ用Si
「クールトップセラ塩ビ用Si」このトップコートの種類は「屋上防水層保護用・水性1液反応硬化形アクリルシリコン樹脂系遮熱塗料」です。
<特徴>
アクリルシリコン樹脂系の、塩ビシート専用の屋上防水層専用・水性遮熱塗料です。こちらも耐候性に優れた塗料です。また、「HP塩ビ用シリコントップP」と同じく可塑剤の移行を抑制する機能を有しているため、直接塗装が可能な素材です。
さらに、高反射性顔料とセラミックバルーンという材料が含まれており、その相乗効果で遮熱機能も持っています。太陽光の近赤外波長域を反射する機能があるため、遮熱効果を発揮します。
塩ビシートが熱によって劣化するのを遅らせますので、定期的なメンテナンスのスパンを長くすることが可能です。
<使用方法>
上述の「HP塩ビ用シリコントップP」と同様です。しかし、注意点があります。
基本的には下塗りが不要なのですが、素地表面の劣化が激しい場合には、アスファルトシーラーまたは水性アスファルトシーラーを下塗りしてください。
<使用量>
塗布する使用量は2回の塗装で、1㎡で0.3〜0.5kgを使用します。
トップコートを長持ちさせる方法
トップコートを長持ちさせる方法は、次の2点です。
- トップコートの再塗装
- 排水溝や屋上の清掃
トップコートの再塗装
トップコートを長期間放置すると、表面のヒビ割れなどで劣化していきます。それが雨漏りの原因などになります。
トップコートの劣化防止と防水層を保護するために、トップコートを再塗装しましょう。
5年に一度の間隔でトップコートの塗装を行うことで、長持ちさせることができ、建物自体も安全なものになります。
長期的に考えると、定期的な再塗装により大規模な防水工事をしなくて済むため、今後のメンテナンス費用を抑えることが可能です。
排水溝や屋上の清掃
屋上やバルコニーに降った雨などは排水溝に流れていきます。このときに、排水溝が詰まっている状態だと、正常に水が流れず、溜まっていきます。そうなると防水の継ぎ目や、劣化が進んでいるところから水が浸水し、防水劣化を早める可能性があり危険です。
そのため、排水溝周りの清掃は定期的に行いましょう。特に、バルコニーや屋上で植物を育てている方は、落ち葉などが詰まる可能性が高いので注意することが重要です。
まとめ
塩ビシート防水のトップコートについて解説しました。防水層を守るためにトップコートは必要なものです。そして、トップコートも永久に維持できるわけではないため、状態によりますが、5年に一度の周期で再塗装などのメンテナンスが必要です。
塩ビシートの防水層やトップコートによって、建物は漏水の被害から守られています。
建物の維持・管理のために防水対策は必須です。
建物の状態によって防水工事の方法は変化しますが、塩ビシート防水はメリットが多い防水工法なので、検討することをおすすめします。