【4種類の防水工事】素材や工法について防水のプロがわかりやすく解説します
ある程度の時期が経過した自宅をお持ちの方やアパートやマンションのオーナーは、業者から防水工事をオススメされた経験はございませんか?
防水工事は建物を守り、寿命を伸ばすために欠かせない大切な工事です。
しかし、防水工事がどのような工事で、どのような効果があるのか分からないと不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は防水工事に関する基礎知識と4つの種類について、わかりやすくご紹介させていただきます。
防水工事とは
防水工事とは建物のベランダや屋上、バルコニーなどの雨にさらされる箇所に対して、雨風から守るための工事を指します。
建物は雨に弱いため、防水工事を行っていなければ内部に水が浸入してしまいます。
多く発生するトラブルの1つである雨漏りは、この内部に浸入した水が原因なのです。
内部に浸入した水を放置しても自然に乾燥するというわけではなく、湿った箇所にカビや菌が繁殖してしまいます。
さらに、カビや菌が繁殖した箇所から腐食が発生した場合、建物に大きなダメージを残してしまいかねません。
結果として、建物の寿命を大きく短くしてしまうのです。
このように、防水工事とは建物の防水性を保障し、雨風から建物を守るため、寿命を伸ばすためには欠かせない工事といえるでしょう。
建物に欠かせない防水工事ですが、新築時だけではなく定期的な施工が必要になります。
ベランダやバルコニーなどの施工箇所は、日々紫外線や雨風による負荷がかかっています。
そのため、10年から15年周期で再度施工を行わなければ、施工箇所の劣化が進み、そこから水が浸入してしまうといったことが起こり得るのです。
また、仮にメンテナンスが必要な周期でない場合でも、建物の環境によって劣化が進んでいることもあるため、目に見える劣化症状があれば都度対応する必要があります。
例えば、劣化症状は施工箇所の色あせやひび割れ、膨れなどが挙げられるでしょう。
これらは目視で確認できるため、少しでも違和感があればすぐに業者に相談することをオススメします。
防水工事が必要な劣化を放置していると症状が悪化し、最終的に建物の劣化に繋がりかねません。
そのような状態に発展する前に、すぐに対応することが大切です。
FRP防水
FRP防水とは、ガラス繊維を混ぜたプラスチックであるFRP(繊維強化プラスチック)を施工箇所に敷き、その上からポリエスチル樹脂を塗布する防水工事の一種です。
重ね塗りを行うため、施工箇所の継ぎ目がなく、水の浸入を防ぎやすいといった特徴があります。
また、ポリエスチル樹脂はすぐに乾燥し、作業時間も短縮できるため、非常に人気のある施工方法です。
FRPは耐久性・耐熱性に優れており、歩行や車両の通行にも耐えられる仕様です。
このような特徴があるため、駐車場のある屋上や歩行することが多いベランダなどに適しているとされています。
さらに、施工は1~2日前後で終了するため、短い工期が求められる場所で重宝されています。
ただし、FRPには伸縮性が低いという性質があるため、木造の広いベランダなどの歪みが生じやすい箇所への施工が行えません。
これらの特徴により、短い工期が求められる場所や耐久性・防水性を重視される場所に適した防水工事とされています。
ただし、10年を目途に補修を行うことを忘れてはいけません。
施工後、10年が近づいてきた段階でトップコートの塗り直しや、FRPの補修を行わなければ徐々にその機能が失われてしまうでしょう。
また、仮に10年を迎える前に表面のひび割れや傷などの劣化症状が確認できた場合は、迅速に対処しましょう。
ウレタン防水
ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を施工箇所に複数回塗ることで防水層を生成する防水工事の一種です。
この施工は材料費が安いため、工事費用を安く抑えたい場合に最適な施工方法です。
また、施工できる職人が多いため、防水工事の中で最も一般的な施工方法として知られています。
ウレタン防水には、密着工法と通気緩衝工法の2種類があります。
前者はウレタンを下地に直接塗ってからその上に補強布を張り、さらにその上からウレタンを一定の厚さになるまで塗り重ね、最後にトップコートを施すという手法です。
後者は通気緩衝シートを下地に貼り付けてから、ウレタンを塗ります。
密着工法は工期の短縮を行えるため、工事費用を抑えられ、通気緩衝工法は面積が広く平面な場所に適しているとされています。
ただし、ウレタンを職人が塗って施工を行うという性質上、職人によって仕上がりに差が出る可能性がある点に注意が必要です。
そのため、依頼する際は高い技術力を持った業者に相談することをオススメします。
塩ビシート防水
塩ビシート防水とは、1.5ミリから2ミリの厚さの塩ビシートを、密着工法か機械固定工法という2種類の手法で施工を行う防水工事です。
密着工法は下地に接着剤を塗り、そこにシートを張り付けるといった施工内容です。
機械固定工法は、下地に丸いディスクを打ち込み、その箇所のみを専用の機械を用いてシートを密着させます。
前者は全体が接着面となるため、シートが浮いている箇所がありません。
そのため、下地との間に通気口がないという性質上、湿気が原因でシートが浮く箇所が出てくる可能性があります。
一方で、後者はディスク以外の箇所に通気口ができているため、湿気に強いです。
ただし、強風によってシートに負荷がかかることがある点に注意が必要です。
塩ビシート防水の2種類の工法には長所・短所があるものの、どちらも防水効果が高く、紫外線や熱への耐久性に優れているという特徴は共通しています。
このような特徴から、主に障害物の少ない学校や病院、ビルなどの建物で施工されることが多いです。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、比較的古くからある工法で、合成繊維不織布にアスファルトを含浸・コーティングしたルーフィングシート(アスファルトシート)を2層以上貼り重ねて形成する工法です。溶けたアスファルトと防水シートとが組み合わせて、それを積層化することによって、耐久性の高い防水層をつくりあげます。
アスファルト防水は表面の仕上げによって、コンクリートでアスファルト防水を保護する「押えコンクリート工法」と、砂付きアスファルトルーフィングを表面層とする「露出仕上げ工法」の2つに分類されます。
また、アスファルトシートの貼り方にも、「熱工法」「トーチ工法」「冷工法(常温粘着シート貼り工法)」の3つがあります。そのうち、「熱工法」は主として近年では新築のみで採用されている工法で、屋上にアスファルト溶融釜を設置し、220℃~270℃に溶融した防水工事用アスファルトによって、ルーフィングシートを貼り重ねていく工法です。それに対して「トーチ工法」「冷工法(常温粘着シート貼り)」はシート自体に予めアスファルトをコーティングしたシートを用います。「トーチ工法」は、トーチバーナーと呼ばれる専用バーナーを用いて、ルーフィングシート裏面のアスファルトを炙り溶かしながら貼り重ねる工法で、「冷工法」は、自着層と呼ばれるゴムアスファルトの粘着層を予めコーティングした改質アスファルトシートを、貼り重ねて行く工法となります。
「熱工法」「トーチ工法」は、熱によりアスファルトを溶着するので防水層の密着度が高いのがメリットですが、溶融釜やトーチバーナーを必要とし、危険性も高く作業員の熟練も要するのがデメリットとなります。近年は、自着層付き改質アスファルトシートの性能向上と安全性への配慮から「冷工法」が採用されることが多くなってきています。
まとめ
今回は、4種類の防水工事に関してご紹介させていただきました。
防水工事には複数の種類があり、それぞれに長所もあれば短所もあります。
また、施工方法によってかかる費用や効果も大きく異なり、防水工事を行う建物にはどの工法が適切なのかを判断する必要があるため、信頼できる業者に施工を依頼しましょう。
加えて、防水工事を定期的に行わなければ建物の寿命が短くなってしまうため、ある程度の情報を知っておくことで、適切な時期や防水工事の劣化状況を把握できるでしょう。
防水工事を検討される際に、ぜひこの記事を参考にしていただければ幸いです。