大規模修繕の前にご検討を! 計画修繕調査費の助成金について、東京都中央区の支援制度を解説

東京都中央区は、日本橋や銀座といった歴史的な街並みと、月島や晴海のような再開発エリアが共存する都市です。超高層タワーマンションが次々と建設される一方で、1990年代〜2000年代初頭に建てられた分譲マンションも多数存在し、築年数は着実に増えています。

マンションは、一見すると鉄筋コンクリートの頑丈な構造物ですが、経年とともに外壁のひび割れ、防水層の劣化、鉄部の錆、給排水管の腐食などが進行します。これらを放置すると、建物の美観や快適性が損なわれるだけでなく、資産価値や安全性にも影響を及ぼします。

修繕工事を計画するには、まず現状の劣化状況を正確に把握する「調査」が欠かせません。しかし、この調査には数十万円単位の費用がかかるため、管理組合の予算にとって大きな負担になることもあります。

そこで、東京都中央区の一般財団法人中央区都市整備公社(以下「公社」と言います)が用意しているのが「分譲マンション計画修繕調査費助成」制度です。※1

※1 本制度は、築8年以上が経過した分譲マンションの管理組合に対し、劣化診断や長期修繕計画作成に必要な調査費用の一部を助成し、計画的な維持管理を後押しするものになります。

今回、大規模修繕を計画するときに使える「東京都中央区の支援制度」について解説いたします。

著者情報

カノーゲル行政書士・社会保険労務士事務所
代表 行政書士・社会保険労務士 
大谷 真美


松戸、虎ノ門、麻布十番の弁護士・行政書士事務所で合計15年勤務後
2020年9月に独立、補助金申請に特化したカノーゲル行政書士事務所開設
2023年11月、カノーゲル社会保険労務士事務所開設
これまで補助金・助成金をサポートした会社は300社以上

目次

分譲マンション計画修繕調査費助成について

まとめ|分譲マンション共用部分改修費用助成を活用して負担を減らそう

参照:公社ホームページ|分譲マンション計画修繕調査費助成

1 制度の目的と背景

中央区は、高層住宅の急増と同時に、中低層の既存マンションが老朽化していく二極化の課題に直面しています。特に、区内の分譲マンションの約3割は築20年以上であり、この割合は今後さらに増加すると予測されています。

管理組合による大規模修繕の実施は義務ではないため(注1)、修繕の判断が遅れるケースもあります。その結果、劣化が進行してから慌てて修繕に取り掛かると、費用は膨れ上がり、住民負担も大きくなります。

この制度は、「早期診断」→「計画策定」→「予防的修繕」という流れを促し、修繕コストの平準化と資産価値の維持を実現するためのものです。

注1  区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)では、建物や共用部分の維持管理は区分所有者全員の共有の責任ですが、「大規模修繕を何年ごとに実施せよ」という義務規定はありません。ただし、国の推奨・管理規約・資産価値維持・安全確保の観点から実質的には義務的運用になっているケースがほとんどです。

2 制度概要

分譲マンションの管理組合が、大規模修繕を計画的に取り組むため専門調査業者に委託した場合の、調査費の一部を予算の範囲内で助成します。建物の調査は戸数によって上限が変わりますが、給排水管の調査は戸数に関わらず一定額です。

 制度概要は下記の通りです。

(1)対象者

・中央区内に立地する分譲マンションの管理組合

・築8年以上経過していること

・管理規約が整備されていること

・過去10年以内に同じ助成を受けていないこと

(2)対象調査

・建物調査(外壁、防水、鉄部等の劣化診断)

・給排水管調査(専有部を除く共用部分)

(3)助成額

・調査費の1/3(1,000円未満切り捨て)、または、助成限度額のいずれか少ない額

(4)助成限度額

・建物の防水・壁面・鉄部等の調査については、住宅として使用している戸数が、

  60戸以下 250,000円

  61戸以上120戸以下 360,000円

  121戸以上 470,000円

・給排水管の調査については、建物の規模に関わりなく、160,000円

   ※建物調査、給排水管調査とも10年間で1回限りの助成です。

3 実際の助成額計算例

では、実際どのような計算式になるかシミュレーションしてみます。

ケース1

築22年・130戸のマンション(外壁調査)

調査費用:90万円 助成額:90万円× 1/3 = 30万円(上限内のため満額)

ケース2

築15年・45戸のマンション(給排水管調査)

調査費用:60万円

助成額:60万円 × 1/3 = 20万円 →16万円(上限に達するため減額)

建物調査と給排水管調査は一緒に実施することもできるので、どちらも行う場合は、それぞれ上限額を考慮した上で計算の上、合計することになります。

4 申請から助成金交付までの流れ

STEP
事前相談

調査契約前に公社に必ず相談します。

STEP
助成申込み

調査実施の1か月前までに下記書類を提出します。

・分譲マンション計画修繕調査費助成申込書

・調査業者の見積書の写し

・管理規約の写し

・調査のための予算計上がなされている管理組合の予算書の写し

・調査実施についての管理組合総会の議決書の写し

STEP
審査・助成内定
STEP
調査実施

助成内定通知が出た後に、調査会社へ調査依頼をします。

STEP
調査報告書作成、調査費支払

調査業者が作成した調査報告書を管理組合が受領後、調査費を支払います。

STEP
完了報告

調査費を支払った後、管理組合が公社に次の書類を提出し、完了報告を行います。

・分譲マンション計画修繕調査完了報告書領収書

  ・調査結果報告書副本   ・調査業者の調査費請求書及び領収書の写し

STEP
助成金請求・交付・口座振込

完了報告の内容について公社による審査があり、助成金交付決定通知を管理組合が受領後、助成金の交付請求を行います。

5 制度利用のメリット

この助成制度は要件にあてはまれば、申請手続きが難しいというものではないので、申請自体のハードルは低いです。 では、制度の利用にあたり、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。

(1)調査費用の負担軽減

建物や給排水管の劣化調査は、規模によっては数十万円〜100万円以上かかる場合があります。助成により最大63万円の負担減が可能。特に小規模マンションや積立金が少ない組合にとっては、資金面のハードルが大幅に下がります。

(2)調査の質向上

助成を受けるためには、適正な手続き・仕様を満たす専門業者に依頼することが多く、診断の精度が高まる傾向があります。これにより、表面的な点検では見つからない構造部や配管内部の隠れた劣化も発見しやすくなります。

(3)長期修繕計画の精度向上

調査結果は、長期修繕計画の見直しや資金計画の再検討に直結します。最新の診断データに基づく計画は、修繕積立金の不足リスクを減らし、計画倒れを防ぐ効果があります。

(4)管理組合内の合意形成が容易に

助成制度を利用することで、「区の支援がある」という安心感が得られます。助成金があることで「今やるべき理由」が明確になり、総会での承認が得やすくなる傾向があります。

(5)給排水管調査も対象

他自治体では外壁や防水など建物外部の調査が中心ですが、中央区は給排水管の劣化調査を別枠で助成します。配管の劣化は外から見えないため、漏水などが起きてからでは修繕費が高額になりますが、予防的な更新計画を立てられる点が大きなメリットです。

6 制度利用のデメリット

逆に本制度を利用することのデメリットは下記が考えられます。

(1)スケジュールの制約

調査実施の1か月前の申請が条件です。住民合意や業者選定が遅れると、その年度の予算が消化され、助成枠を逃す可能性があります。

(2)対象外の費用がある

専有部分の調査(例:各戸内の配管、窓サッシなど)・交通費・消耗品費・管理会社手数料などは助成対象外になる場合が多いです。

(3)助成額には上限がある

大規模マンションでも、助成額は戸数別の上限までなので、実際の調査費が高額になると、自己負担額が思ったより高くなります。

(4)助成ありきで時期を決めるリスク

助成がある年度に無理やり調査を実施すると、実際の劣化時期と合わないケースがあります。結果として、調査後すぐ修繕が必要にならず、「数年後に再調査」という二度手間になることも考えられます。

 特に「助成ありきで時期を決めるリスク」は、本制度に限らず補助金・助成金を申請する場合にネックとなることが多いです。本当に必要な時期を見定めて、申請は検討しましょう。

7 他自治体との比較

東京都は他の都道府県に比べ資金に余裕があるため、どの分野においても助成制度が数多く用意されていますが、中央区以外の23区にはどのような制度があるか見てみましょう。

中央区と同様に、台東区、江東区では支援が手厚いようです。台東区は下町エリアを多く含み、昭和40〜50年代に建てられた中小規模マンションが多数存在するため、区全体で古い建物の割合が高く、外壁や給排水設備の老朽化が顕著、江東区は海沿い・河口部に位置するため、塩害や湿気による劣化スピードが比較的速く、地盤の液状化リスクもあり、防災の観点からも早期の修繕促進が必要という事情があるようです。助成制度の背景を考察すると、土地の歴史や風土が関係していて非常に興味深いです。

まとめ:東京都中央区の他の助成制度と一緒に、上手に使いましょう

これまでに中央区の修繕計画に関する助成として下記2つの制度を紹介してきました。

「分譲マンション共用部分改修費用助成」

「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」

せっかくならば、今回の「分譲マンション計画修繕調査費助成」を加え、3つの制度をフル活用して頂きたいと思います。

STEP
アドバイザーによる助言

「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」で、実務経験豊富なマンション管理士、一級建築士など外部の中立的立場から管理規約や修繕積立金、委託契約など幅広く助言してもらい、問題点や今後の方向性を把握します。

STEP
劣化診断、給排水管調査

今回ご紹介の「分譲マンション計画修繕調査費助成」で、修繕計画の前段階として自分達のマンションの外壁、防水、鉄部等の劣化診断、給排水管調査を実施します。

STEP
修繕工事の実施

実際に修繕工事の実施にあたり、「分譲マンション共用部分改修費用助成」で設計・工事の費用助成を受けます。

制度を全て有効に使うことが出来れば、最大12,576,000円の助成金を受け取ることが可能です。ただし、当たり前のことですが費用の全額は出ません。各制度に固有の助成率があるので、少なからず自己負担は発生します。それでも、より良い住環境を形成するためには極めて有効な手段となります。東京都中央区の管理組合の皆さまには、ぜひ活用を検討して頂きたいと思います。

今回ご紹介しませんでしたが、中央区には「建築物の耐震助成制度」もございます。耐震診断、補強設計、耐震補強工事など限度額3,000万円まで出る制度です。

参照:https://www.city.chuo.lg.jp/a0043/machizukuri/kenchiku/taishin/taisintaisaku.html

ただ、現在は予算やスケジュールの関係で受付停止中です。再開は中央区のホームページでアナウンスされるので、耐震関係で計画をされている管理組合の皆さまは、定期的にホームページをチェックされることをおすすめ致します。

本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。 最新の制度内容や申請手続きについては、一般財団法人中央区都市整備公社のホームページをご確認下さい。

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