昨今の物価高の影響で、電気代は高騰が続いています。家庭用の電気料金は2010年より約1.6倍の水準で、特に東日本大震災以降、燃料費上昇を背景に長期的な上昇傾向が続いています。それに対して私たちができることは、電気プランの見直し、節電の実践、再エネ導入による自給自足の比率向上などが考えられますが、少しでも毎日の支出を押さえる何か使える補助金はないかということで、今回は、東京都中央区の「自然エネルギー・省エネルギー機器等導入費助成」制度をご紹介します。
本制度は、脱炭素社会実現に向けた国・自治体の重要な取り組みの一環として、電力消費の効率化および再生可能エネルギーの普及拡大を同時に推進するものです。機器の導入や工事に興味はあるけれど費用がどのくらいかかるか心配・・という初期コスト負担を軽減することで、さらなる導入拡大を図ることが目的です。
対象となる機器には、太陽光発電や蓄電システムといった自然エネルギー装置に加え、高効率給湯器やエネファーム、省エネ性を高める住宅用機器(高反射率塗料、日射調整フィルムなど)も含まれています。また、中央区独自の取組「中央エコアクト」(CO₂削減自治体施策)への取り組みと合わせることで、補助率が上乗せされるなどの優遇措置も設けられています。
それでは、本制度の詳細を見ていきましょう。

カノーゲル行政書士・社会保険労務士事務所
代表 行政書士・社会保険労務士
大谷 真美
松戸、虎ノ門、麻布十番の弁護士・行政書士事務所で合計15年勤務後
2020年9月に独立、補助金申請に特化したカノーゲル行政書士事務所開設
2023年11月、カノーゲル社会保険労務士事務所開設
これまで補助金・助成金をサポートした会社は300社以上
1 制度の概要:助成対象者
本制度を利用できるのは、令和8年3月15日までに機器等の導入・支払いを済ませたうえで、令和8年3月31日までに区に導入完了報告ができる次の方です。
- 区内に住所を有している方(区民)
- 区内に賃貸共同住宅を所有している方(区民)
- 区内に賃貸共同住宅を所有している中小事業者
- 区内の分譲共同住宅の管理組合
中央区にお住まいの個人のみならず、中小事業者や管理組合も活用できます。
2 制度の概要:対象機器
対象機器は、自然エネルギー機器と省エネルギー機器があります。特徴と対象機器は下記の通りです。

自然エネルギー機器と省エネルギー機器を組み合わせると
「エネルギーをつくる+エネルギーを減らす」=脱炭素・省コストの両輪
が実現できるようになります。
他に、対象機器には共通の要件が3つあります。
- 新たに購入して導入する未使用品であること。
- 住宅用は、居住する住戸で使用されるものであること。
- 共同住宅用は、共用部で使用されるものであること。
※リースや中古品の導入は対象外です。
※対象機器毎に細かい要件がございますので、実際に導入する際には、中央区のホームページをご確認ください。
3 制度の概要:助成金額
気になる助成金額ですが、下記表の通り、対象者と対象機器によって限度額が設定されています。
省エネルギー機器等の場合、機器本体の他に導入に係る工事費も導入費用に含まれます。(諸経費や交通費、振込手数料等の機器の導入に直接関係ない経費は含まれません。)
(助成金交付申請額は、千円未満切り捨てです。対象となる導入費用は税抜きです。)
中央エコアクトの特典を受けた家庭・事業者は、助成金額が増額されます。
(中央エコアクトとは中央区版二酸化炭素排出抑制システムです。)
申請は同一年度内で1回ですが、対象機器が異なれば複数導入も可能なので、個人住宅では最大96万(中央エコアクト適用)、共同住宅では最大165万円、中小事業所では最大193万円(中央エコアクト適用)の助成金が出ることになります。

参照:東京都中央区ホームページ「住宅・共同住宅用の自然エネルギー・省エネルギー機器」
4 制度の概要:手続きの流れ
申請スケジュールと手続きの3つのポイントです。
- 申請期間
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令和7年4月1日(2025年4月1日)〜 予算終了まで
- 導入工事前の事前申請必須
-
工事予定の約2週間前までに申請
- 導入完了期限
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令和8年3月15日(2026年3月15日)
- 完了報告期限
-
令和8年3月31日までに報告書を提出
- ポイント①
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必ず工事前に申請すること(遅くても工事着手の2週間前)。
工事・支払完了後は、一切対象としてもらえなくなります。
- ポイント②
-
申請時と工事内容が変わる場合は、区に事前に相談した上で変更申請を行い、承認後に着工すること。勝手に工事内容を変えると助成対象外となります。
- ポイント③
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工事終了後に導入完了報告に必要な書類を提出すること。
補助金は何でもそうですが、期限や提出書類が明確に定められているので、それらは必ず守りましょう。

参照:東京都中央区ホームページ「住宅・共同住宅用の自然エネルギー・省エネルギー機器」
5 制度の概要:申請に必要な書類
以下の申請書類を導入工事の2週間程度前までに提出します。
①申請資格が確認できる書類 (対象者毎に異なります)
②自然エネルギー及び省エネルギー機器等導入費助成金交付申請書(書式あり)
③機器等の導入に係る発行後3カ月以内の見積書とその内訳書の写し
④機器等の形状・規格等がわかる資料(機器等の要件を満たしていることが確認できる資料、パンフレット等)
⑤対象機器ごとの必要書類

⑥導入承諾書(導入する住宅が自己所有でない場合)(書式あり)
⑦委任状(申請者以外の方が書類の作成や提出等を行う場合)(書式あり)
②⑥⑦の書式はホームページからダウンロードできます。記載内容は難しくないので心配いりません。
対象機器によっては、⑤の書類の用意が大変かもしれませんが、工事を依頼する事業者が対応できるはずなので依頼するようにしましょう。
書類の用意が難しい場合は、書類の作成や提出を工事事業者や行政書士などに依頼することも可能です。その場合は委任状を用意します。
6 制度の概要:完了報告に必要な書類
工事・支払完了後、以下の書類を令和8年3月31日までに揃えて提出します
①自然エネルギー及び省エネルギー機器等導入完了報告書(書式あり)
②支払いが確認できる書類
③領収書、振込依頼書、ATM振込利用明細書等の写し
④導入した機器等の型番、導入住所等が確認できる書類、保証書、納品書、出荷証明書の写し
⑤導入した機器等の写真
⑥【太陽光発電システムを導入した場合】電力会社が発行する「電力需給契約書」の写し(申請時に提出していない場合)
⑦【LEDランプを導入した場合】取り付けたすべてのLEDランプが確認できる写真と設置図面(図面上の設置個所と写真のLEDランプ1つ1つに同じ番号を付け、導入場所がわかるようにしてください。)
上記書類を区が審査して問題なければ、助成金請求書を提出し、口座に助成金が振込まれることとなります。
7 制度の概要:注意事項
制度の利用にあたり、注意すべきは以下の5つです。
注意① 申込みは事前申請です。必ず機器等の導入を行う2週間程度前に申請して下さい。
注意② 同年度内の申請は対象機器ごとに1回までです。
注意③ 偽りその他不正な手段により交付決定を受けて助成金を交付されたときは、決定は取り消され、助成金の返還が求められます。
注意④ 予算が無くなり次第、受付終了されます。現在、ホームページには「9月1日現在、申請額が予算額の70%に達しました。」と表示されています。区に確認したところ、この表示が出たことでさらに申請ペースが早まっているそうです。なるべく早めに申請してください。
注意⑤ 各書類の審査には、現地確認を行う場合があります。
注意③についてですが、本制度に限らず、全国的に様々な補助金で、以下のような事例が多発しています。
・助成対象経費の算定誤り
「値引き額やキャッシュバック分を除かずに助成金額を多く申請」など、実負担よりも上乗せして申請。
・契約書の二重作成
助成申請用の契約書と実際の契約内容が異なり、助成額を不正に水増し。
・助成金併給の隠蔽
国や他自治体の支援と併せて受給できる制度を利用する際に、併給の事実を隠して申請。
このような不正行為は、制度自体の信頼を損なうだけでなく、後に大きな法的・金銭的リスクを伴います。会社名の公表、区のブラックリストに載る、他の補助金に申請できなくなる、などが考えられます。その対応策として、、、
・制度内容の事前確認:交付要綱や手引きを必ず自分自身で読み込み、制度の意図や条件を理解する。
・複数業者からの見積もり取得:費用や条件を比較することで、不透明な営業に騙されるリスクを減らす。
・不自然な条件を提示する業者には注意:「あとで返金」や「自己負担ゼロ」などは要警戒。
これらの一手間をとることで、不正行為に加担する危険を防ぐことができます。制度の正しい活用のためにも、制度内容を理解し、公正かつ透明な手続きを進めましょう。
8 他制度との併用による相乗効果
本制度は、対象となる機器や工事が異なるなら、他の制度と併用も可能です。組み合わせることで、さらに効果的かつ経済的な導入が実現します。
①「住宅省エネ2025キャンペーン」との併用
この制度は、国の環境・エネルギー政策を支えるために、国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して実施している補助金制度です。高断熱窓(先進的窓リノベ)・高効率給湯器(給湯省エネ)・ZEH化支援など、幅広い省エネ改修に対する補助を提供しています。
この制度も、国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携している国の補助金制度です。
戸建・集合住宅のZEH化を対象に、新築・設計段階での高効率設備導入に対する補助(55万円~90万円程度)が提供されています。太陽光・蓄電・HEMSなどとの併用も可能です。
まとめ
中央区の本制度は、「自然エネルギー機器」と「省エネルギー機器」の両方を対象にしていますが、ここまで網羅的にカバーする区は多くなく、「発電」「効率化」「建物性能改善」をまとめて助成する点は大きな強みです。また、「中央エコアクト」との連動で、助成率のアップや限度額が拡大され、環境意識の高い区民・管理組合にインセンティブを与える仕組みは、他区にはあまり見られない特徴です。
令和7年度の予算枠はあと少しです。中央区にお住まいの個人、事業者、管理組合の皆さまは、ぜひ本制度を上手に活用し、日常の光熱費を削減しながら、太陽光や蓄電池を備えた災害に強い住宅を実現していきましょう。
本記事は2025年9月時点の情報に基づいています。
最新の制度内容や申請手続きについては、下記をご確認下さい。