マンションの大規模修繕費用は?相場や注意点、解決策を詳しく解説

マンションの大規模修繕は、コンクリートや塗料の寿命を保ち、安全な住環境を維持するために避けては通れないメンテナンスです。しかし、「いくらかかるのか」「何回くらい必要なのか」「管理会社任せで本当に大丈夫か」など、不安を抱える区分所有者の方は少なくありません。特に2024〜2025年にかけては、資材や人件費の値上げが続いており、修繕費が以前より高くなる傾向が見られます。

この記事では、マンション大規模修繕の費用相場や、1回目・2回目・3回目で費用がどう変化するのかといった実態、外壁塗装や屋根工事など工事別の費用一覧、費用を抑えるためのポイント、支払いが難しい場合の対処法まで、流れに沿って詳しく解説します。管理会社や施工会社に「お任せ」する前に、基本的な仕組みや費用算出の考え方を知っておくことで、今後の総会での議論や見積り比較にも落ち着いて臨めるようになります。

大規模修繕はマンション全体の将来に大きな影響を与えるイベントです。ぜひ本ページの目次から気になる箇所を選び、今後の計画づくりにお役立てください。

目次

マンション大規模修繕の費用相場を理解しよう

マンション大規模修繕

マンションの大規模修繕は、外壁塗装や防水工事、設備交換などをまとめて行う一大プロジェクトで、建物の性能を長く保つための「総合メンテナンス」といえます。そのため修繕費は高くなることが多く、一時的に125万円を超える負担が発生する事例もあり、区分所有者にとって大きなテーマです。

一般的には、新築からおおよそ15年ごとに1回目・2回目・3回目の大規模修繕を行うケースが多いとされています。

  • 1回目:築15年前後 … 外壁塗装や屋上防水など、表面の劣化への対応が中心
  • 2回目:築30年前後 … コンクリートのひび割れなど経年劣化が進み、工事項目・回数とも増えやすい
  • 3回目以降:築45年前後〜 … 設備交換やバリアフリー改修など、機能・性能向上も加えた工事になりがち

国や業界団体の実態調査では、1回目の大規模修繕で1戸あたり約50〜80万円、2回目以降は100万円を超えるケースも多いとされています。規模や床面積、仮設足場の量、使用する資材や塗料の種類によっても大きく変動します。

以下の表は、築年数ごとの1戸あたり費用目安と、主な工事項目のイメージです。

築年数・回数1戸あたりの費用目安(万円)主な工事項目
築〜15年(1回目)30〜60外壁塗装の更新、軽微な不具合の補修、防水の再施工 等
築15〜30年(2回目)60〜100ひび割れ補修、防水強化、設備の一部交換
築30年以上(3回目以降)100〜150設備の更新、バリアフリー対応、劣化が進んだ部位の全面改修

経年劣化が進むほど、工事の種類や仮設工事の規模が増え、総額が高くなる傾向があります。そのため、定期的な診断や実態調査を行い、状態が悪化しすぎる前にタイミングよくメンテナンスを実施することが、長い目で見ると修繕費を抑えることにもつながります。

工事別の大規模修繕費用を詳しく解説

マンション大規模修繕

マンションの大規模修繕では、外壁・屋根・共用部・設備など、多くの工事項目が組み合わさります。それぞれの費用感と役割を把握しておくと、「何にいくらかかっているのか」がわかりやすく、管理会社や施工会社の見積りを比較する際にも役立ちます。

下の表は主な工事項目ごとの費用目安一覧です(1戸あたりのイメージ)。実際の金額は床面積やマンションの高さ、使用する材料のグレードによって変動します。

工事項目費用の内訳・内容費用目安(1戸あたり・万円)
外壁補修・外壁塗装ひび割れ補修、タイル貼り替え、新しい塗料への塗り替え 等30〜60
防水工事(屋上・バルコニー)シート防水・ウレタン防水の再施工、排水周りの不具合補修10〜30
足場・仮設工事外周足場、仮設通路、安全ネットなどの設置費用10〜20
共用部改修廊下・階段・エントランスの床材交換、手すりのバリアフリー対応5〜15
屋根・庇などの改修屋根防水・屋根材交換、庇や笠木の補修10〜30
設備更新給排水管の更新、ポンプ・照明・インターホン設備の交換20〜50
設計監理・診断サービス事前の劣化診断、工事仕様書作成、工事監理 等5〜15

外壁や防水工事は、建物の安全性・防水性能に直結するため、単価が高くなりやすい箇所です。一方、共用部の仕上げ材やバリアフリー改修は、居住者の快適性・見た目の印象を左右します。どこまでを今回の大規模修繕で行い、どこを次回以降に回すのか、それぞれの目的を明確にしておくと、メリハリのある計画が立てやすくなります。

大規模修繕工事の費用に関する注意点

マンション大規模修繕

大規模修繕の見積りは、一見すると総額だけが目立ちがちですが、「なぜこの金額なのか」「どの工事にどれだけかかっているのか」を把握しておかないと、後で費用が増えるリスクが高くなります。ここでは、費用面で特に注意しておきたい点を整理します。

1. 見積りの内訳を数値レベルで確認する
各工事項目の数量・単価・使用材料の種類を、できるだけ細かく確認しましょう。「外壁工事一式」などざっくりした記載だけでは、後から修繕費が増えても理由がわかりません。最低でも2社以上の会社から見積りを取り、回数を重ねて比較することが大切です。

2. 資材・人件費の値上げの影響
近年は塗料・防水シートなどの材料や人件費が高く、2024年以降さらに増える傾向も指摘されています。同じ仕様・同じ床面積でも、10年前の大規模修繕と比べると費用が高くなることが多いため、「前回と同じ金額」とは考えず、現状の相場を前提に検討しましょう。

3. 追加工事・不具合対応の余裕を見ておく
実際にコンクリートをはつってみると想定以上の劣化が見つかるなど、工事中に追加工事が必要になるケースは少なくありません。そのため、見積り総額とは別に、数%〜1〜2割程度の予備費を見込んでおくと安心です。

注意点具体内容対策・ポイント
見積りの詳細確認数量・単価・材料のグレードを確認し、あいまいな「一式」を減らす複数社の見積りを比較し、疑問点はその場で質問する
値上げの影響資材・人件費高騰により、前回より費が高くなる可能性2025年以降の相場も意識し、必要に応じて工事タイミングを検討
追加費用リスク想定外の不具合・劣化の発見による工事項目の増加予備費を事前に計上し、総会での決定事項として共有する

大規模修繕工事の費用を抑える方法

大規模修繕の費用は「高いもの」として受け入れるだけでなく、事前の工夫で抑えられる部分もあります。ここでは、品質を落とさずに費用を抑えるための代表的な方法をご紹介します。

1. 長期修繕計画の見直し・更新を定期的に行う
新築時に作成された長期修繕計画のままでは、経年劣化の進み具合や物価の変化に合わないこともあります。10年〜15年ごとに実態調査を行い、建物の状態に合わせて計画を更新することで、「やるべき工事」と「先送りできる工事」を整理しやすくなります。

2. 工事項目ごとの優先順位をつける
防水・外壁など安全・性能に直結する工事を最優先とし、意匠性や快適性向上の工事は予算に応じて調整する方法があります。それぞれの目的を明確にし、区分所有者全員で合意形成を図ることが重要です。

3. 複数の管理会社・施工会社を比較する
現在の管理会社のグループ会社だけでなく、他社の見積りやサービスも比較すると、費用差や方式の違いがよくわかります。管理方式を見直すことでトータルの修繕費が抑えられるケースもあります。

費用を抑える方法具体的な内容ポイント
長期修繕計画の更新建物診断結果を踏まえ、工事の回数・タイミングを見直す定期的な診断で経年劣化の現状を把握する
工事の優先順位づけ安全性・機能維持を優先し、意匠性は段階的に総会で目的・優先順位を共有し、理解を得る
複数社の比較管理会社・施工会社・コンサル各社の提案を比べる価格だけでなく、サービス内容やアフター対応も確認

大規模修繕工事の費用が払えないときの対処法

修繕積立金だけでは足りず、一時金が必要になると、「支払いが難しい」という声が出てくることがあります。そんなときは個人だけで抱え込まず、早めに管理組合へ状況を伝えることが何より大切です。

1. 管理組合に早めに相談する
支払い方法の回数を増やす(月々払い・2回目・3回目に分ける 等)、期限を調整するなど、柔軟な対応が可能な場合があります。居住者の実情を把握するためにも、「払えないかもしれない」と感じた段階で率直に相談しましょう。

2. 金融機関のローンや助成制度を検討する
区分所有者個人が利用できるリフォームローンや、マンション全体として借入れを行う方式もあります。また、自治体によってはバリアフリー改修や省エネ改修に対する助成制度などが用意されていることもあります。

3. 工事範囲やタイミングの見直し
状況によっては、一部工事を次回に回す、工期を分けるなど、費用負担を平準化する選択肢も考えられます。ただし、性能低下が進んでいる箇所を先送りしすぎると、結果的に費用が増えるリスクもあるため、専門家の意見を踏まえて判断することが重要です。

マンションの修繕積立金の目安

大規模修繕をスムーズに行うためには、「そのときになってからお金を集める」のではなく、長い時間をかけて準備しておくことが不可欠です。その中心となるのが、毎月の修繕積立金です。

目安としては、床面積や共用部分の規模にもよりますが、1戸あたり月額1万円〜2万円程度の積立を行っているマンションが多いといわれています。築年数が進むにつれて必要な修繕費も高くなるため、10年ごとなど定期的に積立額の見直しを行うことが望ましいでしょう。

築年数月額積立金の目安(1戸あたり・円)備考
〜10年5,000〜10,000軽微な補修・点検向けの準備段階
10〜20年10,000〜15,0001回目の大規模修繕に備えた本格的な積立
20〜30年15,000〜20,0002回目の大規模修繕・設備更新を視野に入れた金額
30年以上20,000〜25,0003回目以降の修繕・機能向上工事などに備える

もし現状の積立額では将来の修繕費に足りないことがわかった場合は、できるだけ早いタイミングで修繕積立金の増額や助成制度の活用を検討し、急な一時金発生を避けることが、居住者にとっても大きな安心につながります。

大規模修繕工事の費用が妥当か調べる方法

提示された見積りが「高いのか、妥当なのか、安いのか」は、1回目の大規模修繕では特にわかりにくいものです。ここでは、費用の妥当性をチェックするための基本的な考え方をご紹介します。

1. 複数社の見積りを比較する
同じ条件で依頼した複数社の見積りを比較し、単価や数量に大きな差がないか確認します。「総額」だけではなく、足場・仮設費用、材料費、手間賃など、項目ごとのバランスを見ることが大切です。

2. 公的な実態調査やガイドラインを参照する
国の実態調査やガイドラインでは、床面積あたり・戸数あたりの平均的な修繕費が公表されている場合があります。自分たちのマンションの条件と照らし合わせることで、おおよその相場感をつかむことができます。

3. 第三者コンサルタントに診断を依頼する
大規模修繕コンサルタントなど第三者の専門家に、建物診断や見積りチェックを依頼する方法も有効です。管理会社や施工会社とは別の立場から意見をもらうことで、費用の妥当性や工事内容の適切さがわかりやすくなります。

大規模修繕におけるトラブルを防ぐためのポイント

大規模修繕は、金額も関わる人の数も大きいため、トラブルが起きやすいイベントです。特に「いつ、どのくらいの費用で、どんな工事をするのか」が十分に共有されていないと、居住者の不信感や対立を招きかねません。

トラブルを防ぐためには、次のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 工事の目的・範囲・回数・期間を、総会や説明会でわかりやすく説明する
  • 管理会社任せにせず、管理組合として主体的に情報を集めて判断する
  • 見積りや契約書の内容を、できるだけ事前に居住者へ共有する
  • 質問や意見を受ける窓口を明確にし、小さな疑問も放置しない

こうした基本を押さえることで、区分所有者一人ひとりが納得感を持ちやすくなり、工事中のストレスや後々のトラブルを大きく減らすことができます。

まとめ

マンションの大規模修繕は、建物の性能を長く保ち、資産価値を維持するために欠かせないものですが、その費用は決して小さくありません。1回目・2回目・3回目と回数を重ねるごとに工事項目が増え、修繕費が高くなる傾向があるため、長期的な資金計画と綿密な準備が必要です。

費用が「なぜ高いのか」「何にいくら使うのか」を一覧で把握し、複数社の見積りや第三者の診断を活用しながら、適正な価格かどうかを見極めることが大切です。また、修繕積立金の見直しや助成制度の活用、支払いが難しい場合の相談体制づくりなど、居住者と管理組合が協力してできる対策も少なくありません。

本記事でご紹介したポイントを踏まえ、今後の大規模修繕に向けて、「いつ・どのくらい・どんな目的で」費用が必要になるのかを、マンション全体で共有していきましょう。それが、安心して長く暮らせるマンションを保つうえで、何より大切な第一歩となります。

修工舎では、マンションの大規模修繕工事を行っています。気になる点はお気軽にお問い合わせいただき、あなたのマンションにとって最適な修繕計画づくりを進めてみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次