マンションの修繕積立金は、マンションの資産価値や安全性を維持するための重要な財産です。しかし、近年は、積立金値上げの合意ができないことやインフレの影響などにより、積立金不足に悩む管理組合が増えています。
修繕積立金の値上げだけが解決策ではありません。積立金不足の問題を解決するには「賢い工事発注」の視点を持つことも重要です。
この記事では、修繕積立金と管理費との違い、目安となる金額、修繕積立金が不足する原因、問題を解決するためのアプローチなどを解説します。修繕積立金不足にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも修繕積立金とは?管理費との違いと目安

マンションを購入すると、修繕積立金を毎月支払うことになります。ここでは、修繕積立金とは何かを理解するために、管理費との違いや金額の目安といった基本的な事項を解説します。
長期修繕計画に基づく将来の工事費用の貯蓄
マンションの資産価値や安全性を維持するには、定期的に外壁工事や屋上防水、給排水管の更新などのメンテナンスが欠かせません。修繕積立金は、このような将来の修繕・メンテナンス工事費用に備えて毎月積み立てるものです。
マンションの修繕工事は、長期修繕計画に基づいて行われます。長期修繕計画とは、マンションの共用部分の劣化に備えて、30年程度先までの修繕工事のタイミングや費用などを計画したものです。修繕積立金は、長期修繕計画を実施するための費用に充てられます。
一方、管理費は、管理人の人件費や共用部の清掃費用、設備点検費用など、日々の維持管理にかかる費用に充てられます。修繕積立金と管理費は、マンションの所有者が毎月負担する点では共通しますが、用途は全く異なるものです。
国土交通省のガイドラインによる平米あたりの目安単価
修繕積立金の額については、国交省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しています。ガイドラインで示された金額は、絶対的な基準ではありませんが、各マンションにおける修繕積立金が適正なものであるかを判断する目安として役立つものです。
ガイドラインにおける計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安は、次のとおりです。
| 地上階数 | 建築延床面積 | 月額の専有面積当たりの修繕積立金額 |
|---|---|---|
| 20階未満 | 5,000 ㎡未満 | 335 円/㎡・月 |
| 5,000 ㎡以上~10,000 ㎡未満 | 252 円/㎡・月 | |
| 10,000 ㎡以上~20,000 ㎡未満 | 271 円/㎡・月 | |
| 20,000 ㎡以上 | 255 円/㎡・月 | |
| 20階以上 | – | 338 円/㎡・月 |
参照:マンションの修繕積立金に関するガイドライン|国土交通省
ガイドラインを参考にすると、25階に50㎡の部屋を所有している場合、修繕積立金額の目安は、次のように計算されます。
338円 × 50㎡ = 16,900円
なぜ足りなくなる?修繕積立金が不足する3つの原因

近年、各地のマンションで、長期修繕計画に基づいて積み立てたはずの修繕積立金が不足するという問題が起こっています。修繕積立金が不足する主な原因としては、次の3つが挙げられます。
- 新築時の設定額が低すぎる(段階増額方式の罠)
- 近年の資材価格・人件費の高騰(インフレの影響)
- 想定外の修繕工事の発生
それぞれの原因について具体的に解説します。
新築時の設定額が低すぎる(段階増額方式の罠)
修繕積立金の金額設定については、段階増額方式を用いるのが一般的です。段階増額方式とは、築年数が経過するとともに、段階的に修繕積立金の額を増額する方式のことをいいます。
段階増額方式は、新築時には月々の支払額が安く抑えられるため、分譲時のオーナーを集めやすいというメリットがあります。しかし、実際に修繕積立金の値上げを行うには総会での合意が必要です。総会での合意が得られず、当初の計画通りの段階的な値上げができなければ、修繕積立金が不足するのは当然のことでしょう。
近年の資材価格・人件費の高騰(インフレの影響)
近年、建設業界では資材価格や人件費についてのインフレが加速しています。長期修繕計画の段階では予測できないほどのインフレが続くと、当初予定していた修繕積立金の額では工事が進められなくなってしまいます。
たとえば、当初は1,000万円と予測していた工事費がインフレの影響で1,200万円になった場合、200万円の不足分を埋めるための施策が必要となるでしょう。
想定外の修繕工事の発生
長期修繕計画は、30年ほどの長期計画となっており、その間に想定外の修繕工事が必要となるのは珍しいことではありません。
管理組合の中には、想定外の工事に備えて、積立計画に予備費を設定しているところもあります。しかし、段階増額を予定通りに行えず積立金の額が少なくなってしまったり、インフレの影響で支出が大きくなったりなどの事情が重なると、予備費では対応しきれず修繕積立金不足の状況に追い込まれてしまうでしょう。
積立金不足を解消するための3つのアプローチ

積立金不足の状態に直面した場合の解決策としては、次の3つのアプローチが考えられます。
- 積立金額の改定
- 長期修繕計画の見直し
- 工事内容の精査とコストダウン
それぞれのアプローチ内容について具体的に解説します。
積立金額の改定(値上げの合意形成)
最もストレートな解決策は、修繕積立金を増額することです。
修繕積立金を増額するには、総会での合意形成が必要となります。当然のことながら、各所有者から反対の声が挙がることも考えられます。その場合でも、修繕積立金が不足している理由、値上げしないことによるリスクなどを説明し、粘り強く説得することが重要です。
長期修繕計画の見直し(工事時期の適正化・先送り検討)
別の視点としては、長期修繕計画そのものを見直すというアプローチもあります。マンションの状態によっては、必ずしも当初の予定通りに工事を実施する必要はありません。
たとえば、マンションの安全性に影響がない工事は先送りにして、外壁、防水、給排水管の更新など重要な工事に限定すれば、工事費の大幅な削減が見込めるでしょう。
ただし、工事の必要性についての判断を間違えると、建物の劣化が進んで、将来的に多額の修繕費用がかかるという事態も起こり得ます。長期修繕計画の見直しを検討する際は、専門家へ相談することをおすすめします。
工事内容の精査とコストダウン(ここがプロの腕の見せ所)
最後のアプローチが工事内容の精査により工事費用そのものを下げる方法です。当然のことですが、コストダウンを重視して工事の質を下げてはいけません。修繕工事は、マンションの安全性に直結するものなので、いかに工事の質を下げずにコストダウンできるかが重要となります。
工事内容の精査とコストダウンを行うには、施工業者との協力関係を築く必要があります。信頼の置ける施工業者と協力して工事内容を最適化すれば、工事の質はそのままに大きなコストダウンが可能となるケースも少なくありません。品質を落とさずにコストを抑える方法については、次の見出しで具体的に解説します。
施工品質を落とさずにコストを抑える方法

工事費を抑えるうえで重要となるのが、不要不急の工事を見分けるための劣化診断です。劣化診断とは、建築士などの専門家による修繕の必要性や時期などを判断するための調査のことです。
劣化診断の結果、長期修繕計画に従った工事の一部が不要と判断されることは珍しくありません。当初の計画に縛られることなく、劣化診断により、工事の必要性とタイミングを見極めることで、ムダな工事と費用をカットできます。
また、劣化診断から工事内容の見積り、施行までを一社に任せる責任施工方式を活用すると、業者間の中間マージンのカットによるコストカットが期待できるでしょう。
修工舎は「建物に本当に必要な工事」を見極め、お客様への提案を行っております。マンションの修繕工事について、気になる点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
近年のインフレなどの影響で、修繕積立金不足に悩むマンションの数は多くなっています。積立金不足に対応するには、積立金の額を上げるといった直接的なアプローチだけでなく、長期修繕計画の見直しも必要となるでしょう。
長期修繕計画を見直す際は、施工業者と協力のうえ工事内容の精査とコストダウンを図るとより効果的です。
積立金問題を解決するには、早めの対策が鍵となります。修工舎は、マンションの大規模修繕工事を行っている施工会社です。長期修繕計画の見直しから、工事のコストダウンの提案まで、まずはお気軽にご相談ください。
\防水工事・塗装工事・修繕工事のお悩みは株式会社修工舎へご相談ください/

